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2012.01.28

FTMは新しい情報社会論を生み出せるか

G1


GLOCOMではいま、未来の技術と社会の関わりを考えるFTM(Future Technology Management)フォーラムというプロジェクトを進めている。僕は、このプロジェクトの柱の一つである、Green Tableという若手ラウンドテーブルの企画運営を担当している。

今年度は10月から3月までの間に4回の議論をすることを予定していて、これまでに次のような3回の議論を行なってきた。

■第1回 川崎裕一氏「ソーシャルネットワークはモノづくりを変えるか」 http://www.glocom.ac.jp/2011/12/1ftmgreentable.html ■第2回 楠正憲氏「生産性の再定義 ~「もっと、速く、良く」を超えて~」 http://www.glocom.ac.jp/2012/01/_ftmgreentable.html

■第3回 山田メユミ氏「消費はこの先どう変わるのか? 」
http://www.glocom.ac.jp/2012/01/3ftmgreentable.html

毎回の議論はそれぞれ刺激的で、発見がたくさんあって楽しいのだけれども、このラウンドテーブルの狙いはそこだけではない。4回を通じて「スマート社会」についての考察を深め、構想することにある。だから、各回の議論を通しで眺めてみて、あるいはもうひとつのシニアラウンドテーブル(RedTable※非公開)と合わせて議論を眺めてみて、何が見えてくるのか、ということを考えなければいけない。

で、僕は一連の議論にほぼ全て参加して流れをフォローしているので、自分なりにもやもやと考えているのだが、FTMフォーラムは、どうやら新しい情報社会論を作る場になってきているのではないかと思えてきた。まだ確信を持ってはいえないが、おぼろげながらにポイントが見えてきた気がする。

それは、こういうことだ。公文先生の『リーディングス情報社会』などの整理によれば、情報社会論は、1960年代から70年代にかけての何人かの論者を源流としている。彼らの議論は、重厚長大な工業社会への反省が主要テーマだった。

Infosocio

しかし、90年代中盤から2000年代にかけて、あるいは少なくともここ10年において、「IT革命」や「Web2.0」といったビジネスインパクトやメディア論寄りのキーワードに象徴される情報社会論では、その色は薄まっていた。

それが、2009年にオバマ政権が「グリーンニューディール」政策の中で打ち出したスマートグリッドの議論や、ユビキタスなデバイスで生活環境を高度化するスマート社会論の登場、福島第一原発事故などの要因によって、テーマ的に回帰してきていると思われる。また、インターネットを支える技術者コミュニティと自然への回帰を志向するヒッピー文化にはつながりがあり、それもまたオキュパイ運動などとの関連で表出してきている。

情報社会論は、論点を初期の情報社会論に近いところに戻してきていると思う(だから僕は先日、「メタボリズムの未来都市展」に行ってあれこれ考えたりしてみた。その件についてはまたこんど)。ただ、その時代からは30年以上の時間が経っているので技術や社会状況が変わっているし、どうも人々の心理がこれまでの想定とは変わってきているところにポイントがあると思われる。FTMのGreenTableで「シェア」とか「洞察」とか「一般意志」とか「消費者の志向」について議論してきたのを振り返ると、僕らはその点を掘り下げようとしているのではないかと思う。

これまでの議論を簡単に振り返ると、GreenTableが現状分析を基に望ましいと考えている「スマート社会」とは、シェアを通じて欲望を抑える社会ではなく(むしろシェアを通じて付加価値を高めている)、「もっと、速く、良く」という世界観が描いてきたSFのような未来社会でもない(それはほぼ実現可能だし、それで何をするべきなのかということが問われている)、ビッグデータ解析による行動予測に決定される社会でもなければソーシャル(メディア)マッチョな人たちだけが快適な社会でもない、ということは見えてきている。

そんなわけで、RedTableでやっているような技術・政策的な議論と、GreenTableでやっているような社会的な論を更に深め総合していと、新しい(情報?スマート?)社会論が生まれるんじゃないだろうか、と思えてきました、というお話。

■追記:
ニューズウィーク日本版のウェブコラムで酒井啓子さんが「リベラル民主主義」ではない、ファシズムやポピュリズムなどの「非民主主義」的な思想でもない、「まだ見ぬ新しい思想」が現れてきているのではないか、ということを書いている。この「新しい情報社会論」もそれと関わっているように思う。

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