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2005.05.04

「散歩の達人」は名文に支えられていた!

「散歩の達人」がつまらなくなった気がする」なんて書いたら、たくさんの方からコメントをいただいてしまった。しかも一時はググると1ページ目に出ていたせいか、友人知人だけではなくて、散達の編集部で仕事をしたいと思っている方や、散達のイラストを描いた方からもコメントをいただいてしまって、makolog始めて以来の反響の大きさにちょっと驚いた。

漠然とした印象を書いただけなのに、もしかしたら「散歩の達人」の編集部の方々も見て傷ついているんじゃないか、とか、「散歩の達人」の評判を落としてしまっているんじゃないか、と心配になってきた。僕としては「散歩の達人」にもっともっと面白くいい雑誌になって欲しいのであって、もし心配が当たっていたらそれは本位ではない。

そんなわけで、makologではこれから、何か気がつくことがあった時に「散歩の達人はどうすればもっともっと面白くなるのか問題」を考えてみたいと思う(笑)。

そこで過去の「散歩の達人」を手にとって見たら、一目で気づくことがあった。それは、「文章」の問題だ。過去の号の方が、だんぜん文章が面白いのだ。これだ。まずはこれだ。

2001年7月号(阿佐ヶ谷・善福寺川)の冒頭

太宰治虫と言います。のっけからで申し訳ないのですが、死ぬことにしました。いいえ、止めないでください。いまの私には幸福も不幸もないのですから。あ、そうそう、紹介しますね。こちらは今度ボクと一緒に心中してくれる田辺さんです。ほらシヅ子、ちゃんと頭を下げなさいよ。こちらはなんとかいう雑誌の人で、、、えっと、何でしたっけ?「散歩の鉄人」?はぁ、5回に1回はそう呼ばれると―それはお気の毒にね。いえ、別に興味はないもんですから。
そういえば、阿佐ヶ谷の案内でしたよね。思えばこの街は私のような根無し草が住むにはもってこいの場所だったと思います。

いきなり「太宰治虫と言います」だ。そして「のっけからで申し訳ないのですが、死ぬことにしました」とくる。これは引き込まれまる。

それに対して2005年5月号(ザ・板橋区)の冒頭

いまどき「板橋宿と中山道」といってもピンと来る人は少ないだろうが、このあたりを語る上ではずせないスポットだ。で、現状はどうなのだろうか、散歩がてらにルポしてみよう。

うーん。明らかに文章力が違う。揚げ足を取るようなことはあまりしたくないが、「現状はどうなのだろうか」で始まるなんて、なんか大学生のレポートみたいだ。

こうして古い「散歩の達人」を読んでいたら、冒頭から一気にその土地の雰囲気へと読者を引きずりこむような”名文”が多いことに気づいた。ちょっとずつ引用してみよう。

2000年6月号(柴又・堀切・水元公園)の冒頭

よ、青年、観光かい?いい若いモンが何しょぼくれて飲んでいやがるんだい、え。なに?営業の途中か。ほう、ノルマがきついのか。それで会社辞めて東京を離れたい、と。故郷はどこだい。なに?故郷は捨ててきた?帰る故郷がないってかい。病んでるねえ、青年。そんな時は柴又でも歩いてみたらどうだい。なに?帝釈天はもう行ってきた?コラ青年、帝釈天にちょっと寄っただけで柴又を知った気でいるのか。見上げたもんだよ、屋根屋のふんどし。よし、青年、これから俺が、柴又とはどういう町か教えてやるから、ホラホラお新香なんか食べてないでよーくきくんだぞ、いいか。

寅さんを彷彿とさせる人物が、テンポいい口上のように柴又を紹介していく。

2000年9月号(浦和・与野・大宮)の冒頭

さいたま教入信希望者へのあいさつ
さいたま教は、東京や横浜などに比べて不当に虐げられてきたさいたま地区の本来の姿を、さいたま様の教えを通して布教しているものです。さいたま地区の本来の姿とは「ダサさ」ではなく「人の心の温かさ」、もしくは「豊かな緑と田園風景」「旧中山道に代表される雅やかさ」「流行にとらわれないガンコな魂」なのです。地元の民も他所からの民も、さいたま様の教えを信じれば、幸福な気分へと導かれるのです。まず、さいたま様の守護に感謝しましょう。感謝を表すために、さいたま地区への誤解、、偏見をあなたの頭の中から追い出し、心を真っ白にいたしましょう。そして、さいたま地区を散歩してみましょう。そう、誰でもすぐに実践できることなのです。

与野にある観音様の写真を背景に、このディープで圧倒的な文章で始まる。

2000年10月号(四谷・麹町・荒木町)の冒頭

ハッア~イ!アタシが荒木町一の美女猫・マリリンよ。アタシがこの町に来たのは1年前。前の町ではオトコと揉めてね、めんどくさいから出てきちゃったの。、、、、ああ、なかいろいろ思い出してきちゃったわ。ちょっと待ってて、いま顔を洗って気持ちを落ち着けるから。ペロペロ、グリグリ、、、、。ふう。ごめんなさいね。お話続けましょ。
初めてここの石畳に肉球を踏み入れたときには、ホント、感動したわ。だって、町全体が飲み屋の見本市!ってカンジだったから。いっかにも敷居の高そうな料亭があるかと思えば、その裏手の居酒屋ではサラリーマンのおじ様方がどんちゃん騒ぎ。植木鉢の陰から車力通りを覗けば、香水をプーンと匂わせた年増のママが「ごめんなさいね、ウチ会員制なの」とやんわり酔客を締め出してる。

各ページにいろんな猫が登場して、その猫の性格にあった口調で紹介している。これも面白い。

2001年3月号(神田・神保町)の冒頭

社長  ついに21世紀がやってきた。
社員一同  うっす!
社長  そこでわが社は、さらなる躍進のため、22世紀を見据えた営業を始めなくてはイカン。
一同  、、、、、。
社長  つまりだ、既存の価値観をあえて放棄し、新しい未来を築くためにグローバルな視
お局OL  また社長チャンの長話ね。ところでデブ山はなんでこの会社に入ったの?
デブ新入社員  そうでぶねぇ、大手町や新橋にある大きな会社で小さな歯車になるよりは、ちっちゃい会社で―とおもったでぶよ。
お局  ふぅん、たしかにこの界隈はそんな人たちの町かもね。紺屋町には小さな薬問屋や硝子器具問屋がいっぱいあらうし、須田町あたりも雑居ビルに入った中小の会社ばかり。

これもまたディープ。神田辺りに実際にありそうな中小企業の社長と社員たちの掛け合いで町が紹介される。イラストも味がある。

ちなみにここまで引用した文のライターはほぼ全てちがう人だ。そう考えると、過去の「散歩の達人」は総じて文章力がすごく高かったということだろう。そういえば、駅で衝動的に「散歩の達人」を買って、あまりの面白さに引き込まれて電車の中で夢中で読みふけったことがあったことを思い出した。

というわけで、「散歩の達人」には、もっともっと面白い文章で町歩きを演出して欲しいな、と思うのである。

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