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2004.12.10

監視国家は金がかかるよ

MSN-Mainichi INTERACTIVE 今日の話題など、各紙によると、日本政府も国際テロ組織による犯罪の防止や摘発を目的として、新しい取組みを始める。外国人が日本へ入国する際に指紋採取や写真撮影を行うことになるようだ。早ければ来年の国会に出入国管理・難民認定法改正案を提出するとのこと。

これは、米国がテロ対策で導入した出入国管理プログラム(US-VISIT)とほぼ同じ内容のようだ。またヨーロッパでも同様の取組みが検討されているという話もあるらしく、どうやら今後数年のうちに、出入国時の指紋と顔写真のチェックは世界中で行われるようになっていくと考えられる。

ただしこのUS-VISITに対しては、国家が個人に関する情報を統合管理することへの不快感など「監視国家」批判的な議論が多い。

ところで米、出入国管理装置を100億ドルで発注(日経新聞)という記事にあるように、このプロジェクトのプライムコントラクタとなったアクセンチュアは、米国政府と最大100億ドル(つまり1兆円以上!!)という巨額の契約をした。あまりにも巨額で目を疑うほどだが、嘘ではない。

しかもこれはUS-VISITプログラムに関する契約だけであって、テロリストかどうか参照するためのデータベースの作成や情報収集作業、その他のデータベースとの連携などにはこの他にも莫大な予算が必要になるだろう。したがってこの巨大なシステムを完成させ運用していくにはさらに多くの予算が必要になると思われる。監視追跡を強化するということは実に金がかかるのだ。

途方も無いなぁ、というのが率直な感想だ。1兆円ものシステム開発プロジェクトなんて、マネジメントできるのだろうか。ちょっと古いデータになるがアメリカ国防総省の報告書によれば、1999年の米国の官民合わせたソフトウエア開発プロジェクトのうち、31%が途中でキャンセル、51%において予算とスケジュールがオーバー、その上完成品の61%については顧客の所期要求を満たしていないという結果が出ている(岸本(2003))。巨大な監視追跡システムを作るということは、実に困難なことだ。

ここでちょっと面白いことを思いついた。「監視国家」の象徴としてよく参照されるジョージ・オーウェルの『1984年』では、あらゆる場所に「テレスクリーン」と呼ばれる装置が設置されていて、国民の行動を監視しているけれど、いまの技術であのような装置を作って国内の隅々に配置するとしたら、いったいどれだけの金がかかるのだろうか。ちょっと興味深い。

こうやって考えてみると、一般市民の日常生活のすべてを政府が独占的に把握するような「監視国家」を作ることが、いかに困難なことであるかが分かってくる。

テロのリスクに対する不安はなかなか解消できないので、当面は世界各国で情報技術や生態認証技術などを駆使視した「監視国家」化的な政策のトレンドが続だろう。けれども、冷戦時代の核兵器開発競争が米ソの財政を圧迫して歯止めがかかったように、いずれあるところで国家財政やプロジェクトの有効性の観点から修正がかかるのではないか、なんて思った。

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「経済・政治・国際」カテゴリの記事

コメント

>こうやって考えてみると、一般市民の日常生活のすべてを政府が独占
>的に把握するような「監視国家」を作ることが、いかに困難なことで
>あるかが分かってくる。

でも消費行動の統計をとる為に、企業が作った「テレスクリーン」を政府が接収したら、あながち不可能ではない気もしますね。

>でも消費行動の統計をとる為に、企業が作っ
>た「テレスクリーン」を政府が接収したら、

たしかに。そういう手がありましたか。犯罪が起きたときには民間の監視カメラのデータや通話記録やアクセスログが使われていますから、組み合わせると案外テレスクリーンに近いものができるかもしれません。

ただ、企業が行うマーケティング目的の監視と、いわゆる監視国家の監視では、設備投資の目的とか規模が大きく異なるのではないか、とも思いました。

マーケティング目的の場合は、今より少しでも多く買わせればいいので、設備投資は「足し算」で評価することができます。

でも「監視国家」のようにテロリスト排除とか思想統制を目的とする場合は、究極的には人の行動のあらゆる場面を管理しなければいけないので、必要となる設備投資は桁違いに大きくなるんじゃないでしょうか。しかもテレスクリーンのように厳格に運用すると、やっぱり、マーケティング目的よりも莫大に大きなコストがかかりそうな気がします。

*あらゆる場面を実際に機械で監視するテレスクリーンは、無駄が多いんじゃないかと思いますけどね。それよりも「政府は全てお見通しだ」と『思わせる』こと、つまりパノプティコンのように監視の目を各個人に内面化させる仕組みを作る方が効率的です。

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