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2004年12月

2004.12.24

エネミー・オブ・アメリカ

※このエントリーは映画「エネミー・オブ・アメリカ」を見た感想を書いています。##ネタバレ注意!##

GLOCOMでは最近、監視「社会」に関する議論がよく話題になる。(たとえば東浩紀さんとか、鈴木謙介くんとかised@glocom議事録を参照)

ただ僕は、空港関係のプロジェクトに参加していることもあって、米国政府が進めている監視「国家」的な政策の動向にも強い関心がある。最近Tさんから薦められて見た「エネミー・オブ・アメリカ」は、NSA(National Security Agency)が衛星による追跡や盗聴器などを駆使して主人公のウィル・スミスを追いかける話。詳しいストーリーはここ(ネタバレ注意)を参照。

結局、違法な監視が議員やマスコミに明らかになって、テロ防止のための「通信システムの保安とプライバシー法案」は廃案になる。この映画の結論としては、監視の脅威に対する方策は「監視の監視」であるということのようだ。主人公の妻は「監視を監視するやつを誰が監視するのよ!」と叫んでいたけど。

ところで実際のNSAの活動については、CIAなどに比べて公表されない情報が多いと言われている。しかし先日のエントリーで書いたように、情報技術を駆使して監視国家を作るためにはとんでもなく金がかかるし、そんな情報システムの運用も大変な困難がともなう。また技術的な水準もそこまではいっていないと思う。だからさすがにNSAもこの映画のようなことまではやっていないだろう。

でも、Keyhole(これはすごい)Spaceimagingなんかを見てると、技術的にはまったくの夢物語でもないんじゃないかと思ったりもする。

「政策空間」vol.19はとっくの昔に出ています

私が編集にかかわっている「政策空間 -政策情報・政策アイディアの広場-」ですが、おかげさまで今月も無事にvol.19を発行しました。

個人的に興味深いと思った論文は次の4本です。

スウェーデン年金改革の神髄」
小林 仁(参議院厚生労働委員会調査室次席調査員)

生活保護制度と三位一体改革 ―再分配政策と分権は両立するか―」
勝浦信幸(埼玉県鶴ヶ島市健康福祉部社会福祉課長)

看護のナレッジマネジメント ―看護政策の知識科学的転回―
大串正樹 (北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科 助手)
北村奈緒子(北陸先端科学技術大学院大学知識科学研究科博士前期課程)

「分散型政策社会」の時代に向けて -書評『政治不信の構造』(日本評論社)-
丸楠恭一(ジョンズホプキンズ大学高等国際問題大学院客員研究員 )

特に勝浦氏の論文は、最低保障と絡めて、地方がするべき仕事と国がするべき仕事を論じているあたりが興味深く(これは僕の修士論文と問題意識が近い)、またピーターソンの議論を参照したり各国の制度比較したりして、うまく論じている。

また、大串氏・北村氏の着眼には驚いた。確かに看護という分野は、現場の暗黙知がとても重要な分野だと思う。ナレッジマネジメントという視点から医療や福祉のマネジメントを考えるというのは面白そうだ。

※ところで、本誌でもお知らせしているとおり、「政策空間」は1月の発行をお休みさせていただいて、2月10日発行予定のVol.20から発行を再開します。また紙面とウェブサイトのリニューアルを行い、コンテンツの充実や機能の向上などをしていきます。アイディア出しや編集作業、ウェブサイト製作、また金銭的な面でご協力いただける方を(切に)求めていますので、よろしくお願いします!

2004.12.16

著作権に挑む小中学生

室密blog: ぱど厨続報によると、ぱど厨(他のサイトの画像などを無断で借用または直リンし、素材として使用する小中学生(のコミュニティ=「ぱどタウン」と「カフェスタ」)」に、新展開があったそうだ。

ぱどタウンで直接リンクを貼り素材として使用する事ができなくなりました。 被害者の長期の働き掛けによりようやく運営側が重い腰を上げて対応策を出したと言うことですね。これにより、ぱどタウンを画像取引の場と考えていた「ぱど厨」は「ぱどタウン」から撤退することになります。

そして、新天地「NAVERブログ」に一斉移住を始めました。

はい。今度の彼等はblogです。
彼等はついに、ぱどタウンやカフェスタなどのソーシャルから、この広いネット社会に進出してきてしまいました。フォトアルバムやスクラップ機能を利用し、彼等は画像交換に余念がありません。

そこで、NAVARブログを見てみて驚いた。自分が好きな歌手やタレントの顔画像を貼りまくっていたり、歌詞を丸写しして掲載していたり、楽曲をまるまるコピーして流してしまっていたりする。すごい。JASRACの中の人はこれを見て腰を抜かしてるかもしれない。

著作権に対する挑戦、というかここでは完全に無視されているようだ。いや、これをやっている小中学生はきっと著作権なんて知らないんだろう。

サイトを見ていると、彼らはその音楽が大好きで何度も聞いているということ、歌詞を何度も何度も読み返して気にいっているんだということを素朴に表しているんだと思う。自分自身の中学時代を思い返してみると、好きな歌手(当時はBOWYとかXとかが多かったかな)の歌詞をノートに書いたり黒板に書いたり鞄に書いたりしてたやつが身の回りにけっこういたことが思い出されてなんとも微笑ましいのだが、ぱど厨達はあれと同じ感覚でやっているんだろう。(そういえば卒業文集に尾崎豊「卒業」を丸写ししてたやつがいた。いま考えるとあれは盗作以外の何物でもないな。)

これに対してJASRACはどうするのだろう。訴えるのだろうか。

2004.12.10

元国家公安委員長に執拗な職務質問をしてしまった警察官

日刊スポーツ:「あいつ怪しい」元警察トップに職質にあるように、白川勝彦氏(元衆議院議員、自治大臣、国家公安委員長)が渋谷で警察官に執拗な職務質問に遭遇し、この件を彼のサイトで紹介している。

※この件は後輩のT君に教えてもらいました。ありがとう。

僕はここ2年ほど、空港でICタグを利用するというプロジェクトに関わっている。これは利便性を高める新しいビジネスとして注目されているが、テロ対策とも関係があり、僕自身は米国の本土防衛関連の政策動向を調べたり、「監視国家」「監視社会」論を勉強しながらいろいろ考えている。

監視技術の利用についても、「やましいところがなければ隠すことは無いはずだ」という論理が使われることがある。でもそれは本当か。本当だとしても、そういう論理に基 づいてあれこれ詮索されるようになることは不快ではないのか、と思う。

答えはもちろん「不快」だ。だが、こと航空機テロ対策とか出入国管理となると 甘いことは言えないというか、間違いは許されないので、(↓のエントリーのように)監視を強化したり所持品検 査を徹底したり、指紋などの生体情報を取得したりするという方向になってきている。

じゃあどうすればいいのか、ということについての答えは僕は今のところ持っていない。ただ、この件について考えながら、まずは批判するべきところは批判して、運 用する人間にこの警察官のような勘違いをさせないということが重要ではないか、と 思った。法を運用する人間の勝手な勘違いを批判した、という意味では白川氏の行動を支持したいと思う。

※べつに元国家公安委員長であろうとなかろうと何が正義であるかということは変わらないので、そんなに一生懸命「俺は元国家公安委員長だ」とアピールしなくてもいいんじゃないかと思いましたけど(笑)。その一方で警察官が国家公 安委員長という職についてよく分かっていなかったというのもどうかと思いました。

※しかしこの警察官が言うように、おそらく渋谷の街の犯罪も、けっこう大変なこと になっているのではないかと推測します(よく知りません)。割れ窓理論のように、小さな犯罪を潰していくことが有効なのも確かなので、彼らにはdue processに基づいてしっかり仕事をして欲しいと思います。また、渥美東洋ゼミOBとしては、渋谷の街に関わっている多くの人々を、犯罪をなくすための取組みに巻き込んでいく必要があるんだと思いました。それがコ ミュニティ・ポリーシングではないかと。(渋谷では既にいろいろやってるということは少し知ってます)

監視国家は金がかかるよ

MSN-Mainichi INTERACTIVE 今日の話題など、各紙によると、日本政府も国際テロ組織による犯罪の防止や摘発を目的として、新しい取組みを始める。外国人が日本へ入国する際に指紋採取や写真撮影を行うことになるようだ。早ければ来年の国会に出入国管理・難民認定法改正案を提出するとのこと。

これは、米国がテロ対策で導入した出入国管理プログラム(US-VISIT)とほぼ同じ内容のようだ。またヨーロッパでも同様の取組みが検討されているという話もあるらしく、どうやら今後数年のうちに、出入国時の指紋と顔写真のチェックは世界中で行われるようになっていくと考えられる。

ただしこのUS-VISITに対しては、国家が個人に関する情報を統合管理することへの不快感など「監視国家」批判的な議論が多い。

ところで米、出入国管理装置を100億ドルで発注(日経新聞)という記事にあるように、このプロジェクトのプライムコントラクタとなったアクセンチュアは、米国政府と最大100億ドル(つまり1兆円以上!!)という巨額の契約をした。あまりにも巨額で目を疑うほどだが、嘘ではない。

しかもこれはUS-VISITプログラムに関する契約だけであって、テロリストかどうか参照するためのデータベースの作成や情報収集作業、その他のデータベースとの連携などにはこの他にも莫大な予算が必要になるだろう。したがってこの巨大なシステムを完成させ運用していくにはさらに多くの予算が必要になると思われる。監視追跡を強化するということは実に金がかかるのだ。

途方も無いなぁ、というのが率直な感想だ。1兆円ものシステム開発プロジェクトなんて、マネジメントできるのだろうか。ちょっと古いデータになるがアメリカ国防総省の報告書によれば、1999年の米国の官民合わせたソフトウエア開発プロジェクトのうち、31%が途中でキャンセル、51%において予算とスケジュールがオーバー、その上完成品の61%については顧客の所期要求を満たしていないという結果が出ている(岸本(2003))。巨大な監視追跡システムを作るということは、実に困難なことだ。

ここでちょっと面白いことを思いついた。「監視国家」の象徴としてよく参照されるジョージ・オーウェルの『1984年』では、あらゆる場所に「テレスクリーン」と呼ばれる装置が設置されていて、国民の行動を監視しているけれど、いまの技術であのような装置を作って国内の隅々に配置するとしたら、いったいどれだけの金がかかるのだろうか。ちょっと興味深い。

こうやって考えてみると、一般市民の日常生活のすべてを政府が独占的に把握するような「監視国家」を作ることが、いかに困難なことであるかが分かってくる。

テロのリスクに対する不安はなかなか解消できないので、当面は世界各国で情報技術や生態認証技術などを駆使視した「監視国家」化的な政策のトレンドが続だろう。けれども、冷戦時代の核兵器開発競争が米ソの財政を圧迫して歯止めがかかったように、いずれあるところで国家財政やプロジェクトの有効性の観点から修正がかかるのではないか、なんて思った。

2004.12.01

「革命はブログに記録される」

むなぐるま: ウクライナ情勢〜革命はブログに記録されるを読んで、ウクライナ情勢について関心が高まったとともに、「革命はブログに記録される」という言葉が妙に心に留まった。むなぐるまさんによると、"The revolution will be blogged." というのはandrewsullivan.comのトップページに掲げてある言葉なのだそうだ。

戦争や革命、あるいはクーデターなど統治をめぐる争いが起こると、当事者達はマスメディア、とりわけテレビやラジオの放送局を押さえようとする。情報の流通を司ることが権力を支えるからだ。

だが、こういうやり方は変わってきているのだなぁ、とつくづく思う。イラク戦争では現地発のブログがマスメディアが伝えない情報を伝えた。テロリスト達は放送局にビデオやカセットテープを送るよりも最近はウェブ上で声明や動画を公開するようになってきた。フィリピンでエストラダ政権を倒したスマートモブはSMSで連絡を取り合い、中国でも政府が隠していたSARSに関する情報がSMSで広まった。

現在のウクライナ情勢でも、マスコミは与党のコントロール下にあり、どちらかの立場に偏った情報しか流していない可能性がある。だが、英語で書かれているブログによって、現地の人が発している情報に直接触れることができる。むなぐるまさんが書いているように、ブログがニュースソースとして大いに機能していることが興味深い。後年、この事件を振り返る時には、このようなブログに残された記録が大いに役立つだろう。

ウクライナ情勢そのものについては、まだ不勉強でよくわからない。田中宇氏は「ウクライナ民主主義の戦いのウソ 」なんて書いているけど、実際はどうなんだろうか。