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2004.01.09

中山信弘教授「事務局は余りにも独善的である」

小倉秀夫さんがブログで指摘していて知ったのだが、政府の知的財産戦略本部第6回会議で、東大の中山信弘教授が「事務局は余りにも独善的である」と異議を述べている。

大学問題についてお話をするという話がございましたけれども、大学に関しましては、既に本会議で何回も申し上げております。今日はちょっと違うことですけれども、事務局の在り方について、余りにも独善的であるので、ちょっと異議を申し述べたいと思います。

 私は本部員として、専門調査会でメンバーである必要はないのですが、オブザーバーとして意見を述べたいと申し上げておりましたけれども、一切拒否されております。その理由は官邸の意向であるということでございます。私、まさか総理の意向であるとは考えていないんですけれども、いずれにいたしましても、事務局にはまともに議論をしようという真摯な態度がどうも私には感じられません。 したがって、この報告書には私の意見は反映されておりません。こういうことでは、私は本部員を続けている意義はないと考えております。

 1例を挙げるならば、先ほどから議論になっている知財高等裁判所でございますけれども、独立した知的財産高等裁判所という特別裁判所をつくるということは、職分管轄を始め、うかつにつくりますと、極めて使い勝手の悪い制度になるわけでございます。したがって、十分な議論をしなければいけない。今、議論をされておりますように、侵害まで扱うような特別裁判所につきましては、世界でも類を見ない新しい制度であります。

 したがって、私はどうしても申し上げたいことはたくさんあります。単に知財だけではなくて、これは法務大臣おっしゃったとおり、司法制度・裁判制度全般に関わる問題で、幾らでも意見を申したいことはあるんですけれども、本部員として意見を述べることは、先ほど言いましたように、禁じられております。

 私個人の意見が封じられるなら大した問題にないのですけれども、実は多くの弁護士や裁判官や研究者等々の、知財の専門家に対して議論をする場、あるいは議論をする時間が全く与えられていないということが最大の問題だと考えております。

 今、行われているような世界に例を見ないような大きな知財改革を行うに際しまして、これほど短い時間で行うという例も私は知りません。 例えばアメリカにおきましては、数年をかけて、各界の議論を基にして、特許裁判所は弊害が大きいということで、特許裁判所に代わってCAFCをつくったという経緯がございます。

 そもそも知財の改革というものは、大きな政治問題になるような性質のものではありません。要は裁判が迅速・的確に行われるとか、あるいは質を確保しつつ、迅速な特許審査が行われるか等々といったような非政治的な問題でありまして、これは学界を始め、多くのところで詳細な議論をしなければならない問題であると考えております。

 世界中でも知財の改革というのはありますけれども、その結論は別といたしまして、学界とか法曹界において、多くの徹底した議論がなされて、その議論の後を後世に残す。それが世界の知的な資産になっているわけであります。
 仮に今の改革ができたといたしましても、現実に裁判等々を運営していく知財の専門家から、これほどまでの怨嗟の的になっていて、果たして実効性のある改革ができるかという点を私は非常に危惧しております。

 5月にこの本部会でも申し上げましたけれども、事務局はあくまでも本部の事務局でありまして、事務局自体が特定の見解、特定の案に固執するとか、特定の本部員を排除して、政治家や財界のトップと話しをつけて決着をするというたぐいのものではないと私は考えております。 時間の関係でこれ以上詳しいことは申し上げませんけれども、とにかく急ぐだけが能ではないわけでありまして、各界に十分議論をする機会と時間というものを与えてほしいと思います。

 私にとって、先ほど言いましたように発言の機会は今日しかないわけであります。したがいまして、私としていたしましては、重大な決意を持って申し上げているわけでありまして、総理としても、重みを持って受け止めてもらえれば幸いでございます。

小倉氏によれば、「東大で知的財産権法を受け持つ中山信弘教授といえば、知的財産権法の分野では押しも押されぬ第一人者ですし、その温厚なお人柄は、誰からも尊敬を集めるお方」である。その中山教授が決意を込めて行った指摘は非常に考えさせられる。

行政主導の閉じられた議論を打破することを目的として、内閣の下に知的財産戦略本部は設けられたと理解していた。だが、その運営にはまだまだ問題がありそうである。知的財産権法の議論に対する関心からも、政策形成過程への関心からも大変興味深い発言だ。

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